イベントのレポート(メモ)です。
参加したのは「CAPCOM オープンカンファレンス RE:2026」

ハッシュタグ : #RE2026CAPCOM
- CAPCOM オープンカンファレンス RE:2026とは
- 会場の雰囲気・展示ブース
- 【WEST】次世代に向けRE ENGINEをさらに進化させる「REX」プロジェクトの展望と未来
- 【WEST】RE ENGINEのC++とC#~高速開発と高性能を支える技術
- 【WEST】「自動プレイQA」の限界への挑戦~画面と音で判断する「自律プレイAI」によるテストとシフトレフト
- 【WEST】ツール開発のパラダイムシフト!内製UIフレームワーク「RE:UI」の思想と実装
- 【WEST】莫大な物量を支えるログシステム「RE:Log」の設計と実装/10年分の知見へのアクセスをLLMで実現する「RE:AssistAI」
- 【EAST】『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』の広大なフィールドを構築するツール群と様々なツールがもたらすチーム文化
- 【WEST】『バイオハザード レクイエム』へとつながる『バイオハザード』シリーズとRE ENGINEの歩み、そして技術への挑戦
- 【WEST】新規IP『プラグマタ』のゲームデザイン、そしていくつもの困難を乗り越えてきたチーム運営の変遷
- 感想
CAPCOM オープンカンファレンス RE:2026とは
「CAPCOM オープンカンファレンス RE:2026」は、
株式会社カプコンが主催する、ゲーム開発技術に特化した自社テックカンファレンスです。
社会人向けと学生向けがあり、今回は社会人向けに参加してきました。
10月中旬には大阪でも開催されます。
「CAPCOM オープンカンファレンス RE:2026」は、株式会社カプコンが主催する、ゲーム開発技術に特化した自社テックカンファレンスです。
本年は、技術講演に加えて常設型の展示エリアを展開し、来場者が実際に手を動かしながら理解を深められる構成としています。展示では、開発環境、制作手法、ツール群、ワークフローなどを具体的に紹介し、現場レベルの実装や工夫を体験的にご覧いただけます。題材となるゲームタイトルとしては、2026年最新タイトルの『鬼武者 Way of the Sword』『プラグマタ』『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』『バイオハザード レクイエム』や、今なお人気のAAAタイトル『モンスターハンターワイルズ』『ストリートファイター6』、更に大阪・関西万博へ出展した没入型アトラクション『モンスターハンター ブリッジ』も含めた幅広いラインナップを予定しています。
RE ENGINEリードアーキテクトによるREXプロジェクト解説・各分野の専門技術に踏み込んだ社会人向け講演に加え、『プラグマタ』ディレクターによる学生向け基調講演、若手クリエイターによるパネルディスカッションも実施予定です。様々な視点から複合的にカプコンの技術や開発ノウハウをご紹介します。
タイムテーブルはこんな感じです。主にWESTの講演をメインで視聴しました。

過去のカンファレンスについてはこちらから視聴できます。
https://www.capcom-games.com/coc/2023/ja-jp/
会場の雰囲気・展示ブース
会場はゲームメーカーズスクランブルと同じTOC有明です。
展示ブースでは様々展示が行われていました。

技術的な話題のポスター展示と解説デモ。

自動プレイのデモ。


カプコン新入社員向け研修内容の紹介。


ほか、撮影不可でしたが実際にRE ENGINEを触れるコーナーもありました。
マウスとキーボードを操作し、
バイオハザード レクイエムのシーン内にオブジェクトを配置する体験ができました。
ちなみに変な操作をすると
「これはカンファレンス展示版なのでその操作はできません」みたいなダイアログが出ました。
こういうのができるのも内製エンジンならではですね。
以下講演の簡単なまとめです。
後で公式チャンネルに講演動画がアップされるはずなので、詳しくはそちらを待つのがよさそう。
【WEST】次世代に向けRE ENGINEをさらに進化させる「REX」プロジェクトの展望と未来
現行のRE ENGINEの抱える問題。次世代のREXの展望について。
現在の課題
プロジェクトの拡大により、多くの人がRE ENGINEに触れるようになり、
市販のゲームエンジン同様のユーザビリティが求められるようになった。
AIとの連携強化も求められた。
REX(RE neXt Engine)とは、RE ENGINEを段階的に引き上げていくプロジェクト。
キーコンポーネントが5つある。
キーコンポーネント
- RE:Dox
様々なデータフォーマットを共通の構造で扱うデータ処理ライブラリ。
GitHubで公開中。
- RE:UI
C#のみでUIを構築するシステム。もともと使っていたWPFよりも高速。
MVVCという独自アーキテクチャを導入。 - RE:Log
テキストベースではなくIDベースでログを出すシステム。
サーバーで全てのログを管理する。 - RE:Flows
ビジュアルスクリプトによりゲームロジックを作成し、コードへ変換するシステム。 - RE:Runtime
ランタイムには独自言語RE:C++を導入。64KB単位のページを利用したメモリ管理を行う。
RE:C++は、C++23をベースにC#に対応した独自言語でC#のライブラリはそのまま使える。
マイクロアレイという新しい配列構造も取り入れている。


REXの目指すビジョン
REXが目指すのは「AI世代のゲームエンジン」。
C#エコシステムへの統合や、AIがコードの理解・生成・テストを一貫して行える環境を構築する。
AIエージェントファーストな設計にし、AIとともに継続的に開発生産性を高めていく。
【WEST】RE ENGINEのC++とC#~高速開発と高性能を支える技術
RE ENGINEの設計方針は、1つのエンジンで全てのタイトルを開発すること。
モジュラー構造で機能追加ができ、下位互換性があること。
ランタイムについて
ランタイムはC++で記述。
下位互換性を維持しながらC++のバージョンを上げている
(バージョンを上げる理由はC++の新しい機能を使いたいから)
C++20に対応するまでの道のりの解説。
スクリプトシステムについて
RE ENGINEのゲームロジックはC#で記述。
ホットパッチ*1、インタープリター実行で開発イテレーションを高速化。
Roslyn APIによる差分コンパイルで、コンパイル時間短縮も行う。


製品時
独自のIL2CPP(Unityにも同じ名前のものがあるが、名前が同じだけで別物)により、
ILを解析して生成するコードを最適化したり、ObjectStackAllocationによって、
条件を満たすオブジェクトをスタック上に配置するなど、メモリ管理を最適化する。
【WEST】「自動プレイQA」の限界への挑戦~画面と音で判断する「自律プレイAI」によるテストとシフトレフト
今の現場の抱えている問題として、テストケースやチェック項目の多さがある。
これにはAIなどの補助が不可欠。今回は自動テストを行う自律プレイAIの構成について解説。
状況認識AIが画面から情報を取得し、行動決定AIが戦術を立て操作信号を入力するという、
「観測→判断→操作」のループを構築し、人間と同じ入出力を行うという構成。

状況認識AIによる画面認識
OCRによるUIテキスト読み取りや、テンプレートマッチングによるUIの認識など、
様々なセンサーを駆使して画面の情報をリアルタイムに取得する。

これにより内部データを参照せず、人間と同じ入出力条件で動作するAIエージェントを作成。
行動決定AIによる人間に近い思考プロセス
状況認識AIにより得られた情報と攻略知識をもとに、
ニューロシンボリックAIで状況を判断し戦術を決定する。
プレイスタイルの指定(回復を使わせないなど)もできる。
これにより、単なる自動プレイではなく知的なQAエージェントとして活用できる。
実用例の紹介
・負荷の可視化
カメラをあちこちに向けながらステージ内を巡回させレンダリング負荷を計測。
そこからヒートマップを作成して、描画負荷が高い場所を可視化。
・カットシーンの確認
装備を切り替えながらカットシーンを全て確認、
装備によってはキャラクターと顔が被ったりしてしまうなどを自動で検知する仕組み。

最後に
AIは人間の代わりではない。
AIには膨大なパターン検証やテキストの整合性チェックなど、人間には負担の大きい作業を任せる。
空いた時間で面白さを追求するのは人間の役割。

【WEST】ツール開発のパラダイムシフト!内製UIフレームワーク「RE:UI」の思想と実装
RE ENGINEはWPFを使っていたが、エンジンが大きくなり様々な課題が出てきたためRE:UIを構築。
イベントとパフォーマンスの問題
アーキテクチャはMVVMは使用していたが、実装時に変更通知の抜けが起きやすい。
変更通知が多いとパフォーマンスが悪くなり、
短いスパンで変更が一定に行われると処理が追いつかず止まることもある。
MVVMの肥大化に加え、WPF特有の実装パターン習熟コストもかかる。
MVVMの実装パターンは解釈に揺らぎがあり、標準化が難しい。

さらにWPFはWindows以外に対応していない。
RE:UIの特徴
MVVCという独自のアーキテクチャを導入。
さらに、中間描写コマンドによりコマンドが前回フレームと一致する場合は再描画をスキップする。

RE:UIは単体では動かず、表示はバックエンドで行う。
バックエンドにはWPFや.NET MAUIを選択でき、Macでも動作可能。
RE:UIの運用事例
・RE:Logのブラウザ。ログからグラフを生成したりもできる。
・RE:Profiler。WPFで実装していたものを置き換え。
RE:UIToolkit
ゲームエンジン開発に特化したRE:UIの拡張パッケージ。
インスペクター、グラフエディター、タイムラインなどを扱える。

(Unityのエディター拡張的なことがしやすいというイメージかも)
まとめ
RE ENGINEはWPFを使っていたが、エンジンが大きくなり様々な課題が出てきたため、
次世代ゲームエンジンに特化したUIフレームワークRE:UIを内製。
今後はRE:UIToolkitを拡張していき、次世代エンジンの基盤として活躍してもらう見込み。
【WEST】莫大な物量を支えるログシステム「RE:Log」の設計と実装/10年分の知見へのアクセスをLLMで実現する「RE:AssistAI」
RE:Log
ログは開発やデバッグで欠かせないもの。RE:Logはログをより便利にするパッケージ。
ランタイム→Log Client(各自のクライアント)→サーバーへログを送信し保存される。
ログはチャンネルという単位でカテゴライズされていて、フィルタリングできるようになっている。

専用ブラウザを使うことでサーバーやLog Clientにあるログを確認できるほか、
URLでログを簡単に共有できる。
ログのメッセージはテキストではなくIDを渡す(テキストも送れる)。
ログの文面はサーバー側にあり、IDを使ってメッセージを構築する。
これにより文面の変更やローカライズが用意になる。ログデータ量も削減できる。
RE:AssistAI
社内ドキュメントの調査コストや、
コミュニケーションツール(Microsoft Teamsなど)で特定の会話を検索する時間を削減するAI機能。
情報の更新・NLPを基盤とした検索・SLMによる自動返答を組み合わせたシステム。
(ここの構成の話は結構難しかった)

【EAST】『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』の広大なフィールドを構築するツール群と様々なツールがもたらすチーム文化
MHST3において、広大なフィールド制作をツールがどう支えたのか。
そしてチームの行動や文化をツールはどう導いたという内容。
制作の分割管理
制作中は、制作用アセットと製品用アセットで分けて管理。
制作用アセットは作りやすさを重視し、製品用アセットは品質を重視している。
これらをつなぐために、以下のようなツールを用意。
ツールの紹介
・Houdiniによる地形コリジョンを最適化するツール。
・負荷を軽くするため、広大なステージをグリッド分割するツール。
・地形アセットが更新されたらNavMeshを自動更新するツール。
・ボクセルによるキャラクター制御。(コリジョンがロードされていない遠方のキャラ移動に使用)
利用障壁の低いツールによる文化形成
不具合報告は、報告ツールを導入することで入力の手間を最小化しハードルを下げる。
ハードルが下がれば報告する意識が生まれる。
報告された不具合は振り分けられるのを待つのではなく、
自分から対応するなど当事者として取り組む姿勢ができる。

他、AIを活用した業務効率化についても紹介されました。
【WEST】『バイオハザード レクイエム』へとつながる『バイオハザード』シリーズとRE ENGINEの歩み、そして技術への挑戦
各タイトルを作った時の振り返り。
同じRE ENGINEによる開発でも、機能・運用方法は異なる。
当時の開発で直面した課題について。
バイオハザード7の時
シーン階層によるゲーム設計になっていて、プログラムは各シーンに含まれる構成だった。
DLC1に含まれるプログラムは、DLC1のリリース後にロックされ、変更できないなどの問題が発生した。

バイオハザード ヴィレッジの時
7での問題を受け、新機能や改善を盛り込んで再設計。
(プログラムはそのまま使い回せなかったため、作り直した)
コンポーネントベースから自前クラスで制御する方法に移行。

7の時、GCは問題になっていなかったのでヴィレッジでも特別意識しなかった。
しかし自前クラス化による参照関係増加により目立つようになってしまった。
また、この頃から3Dモデルの高ポリゴン化でメッシュデータが増えた。
その分使用メモリが増え、終盤はメモリ不足によるクラッシュもあった。
テクスチャと違ってメッシュは一律に削減しにくく、ここの解決はレクイエムで行った。
バイオハザード レクイエムの時
レクイエムでは次世代ハードも見据え高品質モデルで作成。
キャラクターモデルと背景モデルにLODを用意し、
製品としてどこまで許容されるかをレベルごとに選定して決める。

RE ENGINEの運用
RE ENGINEは日々更新されていてチェックを通過したバージョンが開発に使われる。
その時、タイトルごとに専用ブランチに分け運用する。積極的な更新の取り込みは行われない。
タイトル開発中に発生した課題については、サポート専門チームによる協力体制が敷かれている。

【WEST】新規IP『プラグマタ』のゲームデザイン、そしていくつもの困難を乗り越えてきたチーム運営の変遷
プラグマタディレクターのチョウ・ヨンヒ氏による、
プラグマタを作るときに何が起きたかという振り返り。
登壇者の経歴、ゲームクリエイターになるまで、プラグマタの開発時のエピソードについて、
イラストつきでビジュアルノベルのように解説されました。


ディレクターのビジョンはディレクター自身も具体化できない。
「○○がしたい」「○○が好き」には理由があるはず、自分自身を理解すること。
ゲームのイメージは客観的な言葉で明確に伝えること。




感想
昨今のAI情勢に合わせてなのか、AIに関連した内容が多かったですね。
中でも「自動プレイQA」の最後にあった「AIは人間の代わりではない」というメッセージは響きました。
個人的に刺さったのが「RE:Log」と「ツールがもたらすチーム文化」の話でしょうか。
私は最近Unityのエディター拡張で開発補助ツールを作る機会が多いので、
ツールを作る上での考え方や思想は大いに参考になりました。
他に気になるところとして、
各公演開始時に共同執筆者(おそらくスライドを一緒に作成した人)の紹介が毎回行われていました。
展示ブースでも、各展示のスタッフクレジットがされています。

カプコンがスタッフを大切にしている雰囲気が伝わってきていいですね。
以上です。
*1:実行中にコードを書き換えて反映させ即座に確認できる機能、ホットリロード的なやつだと思う






















































































